時事・知識・マインド

不動産の資産価値は街づくりから

2019年9月7日

オフィスのデスクより、

この写真がどこだか分かりますか?

答えは「広島平和公園の慰霊碑」です。ご存知の方も多いと思いのではないでしょうか。

「なんで広島平和公園」と思うかもしれませんが、この記事を読み終えた時、広島平和公園に対する見方がちょっと変わるかもしれません。

さて、昨日ちょっとしたご縁から、街づくりのセミナーに参加してきました。

名古屋市で開催されたものですが、テーマは「刈谷市にみる、街の活性化が暮らしを変える!街づくり・再開発と定借」というものでした。

前半は、刈谷市で実際に進んでいる行政とのプロジェクトのいきさつや計画について、実際の事業者から説明がありました。

刈谷市に行ったことがある方、近くに住んでいる方なんかであれば、刈谷市駅近くに建築中のタワーマンションのようなものを見かけたことがあるかもしれません。そのプロジェクトについてでした。

ちょうど私もここ最近刈谷の物件案内にいくことが多く、あの建築中のマンションを見て、タワーマンションでも出来るのかなぁと思っていたのですが、それよりもスケールの大きな刈谷市の再開発事業でした。

実はあの土地は刈谷市やその他地権者のもので、定期借地と呼ばれ、一定の期間、地権者から土地を借りるというものです。マンションも含まれた複合施設で、65年後には更地になる計画です。

ここでは事業スキームや地権者との折衝の中身など、中心にいる事業者ならではの濃い話を聞くことが出来ました。

所有者の大半は刈谷市が買収したもので、刈谷市の土地となるため、事業者や計画を募集する際に、公共性や地域発展を求められるもので、そういった計画についても詳細に説明していただきました。

なかなか聞くことが出来ない内情の話が、非常に参考になりました。

そして、セミナーの後半には、実際このプロジェクトの設計にかかわった建築家、鵜飼哲也氏が登壇。

この鵜飼先生は、刈谷市出身で東大の建築家を出た後、日本が世界に誇る建築家、丹下健三氏の建築事務所に入所しました。

ちなみにこの丹下先生というのは、広島平和公園内の平和記念資料館や、大阪万博、国立代々木競技場、東京都庁といった日本が世界に誇る建造物を設計した人物です。

そしてその丹下先生の下で、鵜飼先生もお台場のフジテレビ本社の設計や、ミランやパリの都市計画プロジェクトを経て独立。それから、私たちにも比較的に身近な「刈谷ハイウェイオアシス」を設計。

実は刈谷ハイウェイオアシスは、レジャー施設来場者数で東京ディスにーランド・大阪USJに次ぐ第3位だそうです。

ここで鵜飼先生の話で印象を受けたのが、丹下先生から脈々と引き継がれた常識にとらわれない発想と、その建物が、その周辺とどう組み合わさって、どんなイメージやメッセージを発信するか。

たとえば、丹下先生は広島平和公園のプロジェクトで、川に囲まれた三角州をどうするかというテーマだったのですが、原爆ドームから公園に一本線を引くことによって、もともと保存される予定もなかった建物を「原爆ドーム」として保存されるようにしたそうです。

他の公募参加者はこの三角州のなかをどうするかばかり考えていたが、丹下先生だけが周りの街を巻き込み、未来へ広島から平和への祈りのメッセージを作ったといわれています。

慰霊碑から見える原爆ドームこそ、この広島平和公園が平和の象徴たるゆえんになっていますよね。この丹下先生の設計がなければ原爆ドームはもしかしたら存在していなかったかもしれないというところに、建築デザインの奥深さを感じました。

そこで刈谷市のプロジェクトに話が戻るわけですが、刈谷市のプロジェクトにおいても、その街づくりの考え方を反映させてデザインされているようです。

とくに鵜飼先生は、街づくりは面よりも線で考えた方が上手くいくという考え方があり、今回のプロジェクトから刈谷市駅までを線でつなぐと、ちょうどそこの線にはかつて栄えた商店街があるんですよね。

つまりそこの線を活かした街づくりをすることで、このプロジェクトがより刈谷市を豊かにするという街づくり全体のコンセプトになるわけです。

また鵜飼先生はこんなことも、おっしゃってました。

「人口は減り、不動産を「負」動産なんて揶揄されたりもするが、本来は「付」動産、「富」動産であるべきだ。街づくりが上手くいって、住みたいと思える街づくりが出来れば、それはその街の資産になる」

この言葉を聞いて、刈谷市が何で最近あれだけ価格が上がっているのかと聞かれた時に「トヨタ」の影響というのが業界関係者の共通の意見ですが、それだけではない刈谷市の良さが垣間見えました。

街づくりは本当に大切で、アメリカの不動産価値は街づくりによって決まっているといわれているくらいです。

「こんな街に住んでみたい」という要望を満たせる街は発展していくだろうし、そうでないところは淘汰されていくのは、人口が減っていく中では仕方のないことかもしれません。

不動産価値は広域の立地が6割というデータも出ています。広域の立地というのは「どこの街に住むか」という意味です。

もちろん生まれ育った土地だからという考え方もあるかもしれません。しかし未来志向でいえば、どんな街に住んでみたいかという観点が資産価値につながるのではないでしょうか。

その街がどんな街づくりを目指しているのか、HPにも掲載されていることが多いですし、公聴会などにいけばはなしを聞くことも出来ます。

あなたも住む場所を決めるときは、こんな「街」に対する視点を持ってみてはいかがでしょうか。

宮田明典

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